「ダメな自分」に罰を与えていませんか?
セラピスト 西岡とし子 です。
子供の頃から一番の趣味は読書でした。それが高じて作家になったのですが、デビューから10数年経った頃、あえなく廃業してしまいます。
理由を問われると、分かりやすく「病気をしたので…」と答えています。それは嘘ではないのですが、作家時代に一番きつかったのは病気、というよりは
「不眠」という症状でした。
睡眠障害にも種類があるのですが、私の場合は「入眠障害」。
つまり、寝つくことが出来ないタイプでした。
文章を書く仕事には色々ありますが、私の仕事のメインは小説を書くこと。
一つの仕事で必要な原稿(400字づめとして)は雑誌掲載なら最低120枚程度、文庫・新書一冊分なら最低180~200枚程度の原稿が必要になります(出版社・編集部によっても異なりますがおおよそ)。
が、私は超・遅筆でした。
雑誌掲載の初稿でも、一日中休みなく書き続けて二か月はかかる有様。引く手数多の売れっ子さんならともかく、私程度の作家では芳しくない生産量です。
売れる作家でないならせめてたくさん書かなければ生き残れない、仕事を失くす、と当時はいつもビクビクしていました。
お布団もいいなあ…(⌒▽⌒)
その上、細かいことにこだわって、昨日せっかく進んだと思った十数ページを削除し、その日書き進んだ原稿がゼロどころかマイナスになる日も。
私ってなんでこんなに筆が遅いんだろう。
集中力がないからかな。
やっぱり才能ないのかな。
小説家になったのが間違いだった…
毎日毎日そんなことばかり思っていました。あとですね、恥ずかしながら私はずっと独身で、そのプレッシャーも強かったのだと思います。
「自分で自分を食べさせなければ将来誰も面倒みてくれないんだから!!」
毎日悶々と「独身」「失職」「孤独死…」とかそんなことばかり考えて、一方で原稿はなかなか進みません。
ちょっと寝ようかな、とベッドに入ると、何故か激しい動悸がして眠れない。ちょっとうとうとしても、すぐに目を覚ましてその度に焦燥感で汗びっしょりになっていました。
だんだん、眠るのもベッドに入って横になるのも怖くなり、睡眠薬を常用するように。
まったく仕事がはかどらない自分に眠る資格はない、と無意識に考えていたのだと思います。
眠ろうとしている自分を、
「悠長に寝てられる立場なの?」
「寝ても状況変わらないよ?」
「寝てる間、一ページも原稿仕上がらないけど、それでもいいの?」
と責めてたんだと思います。
起きていること=仕事をしてる、ということじゃないのにな…
こう書くと、私って 真面目で自分に厳しい人なの!
ときには自分を許して、甘やかさなきゃいけないよね! 自分を癒さなきゃ!
という女子力の高い優しい言葉を羅列しそうになりますが、単に自己管理出来ないアンポンタンということです。
きちんと管理すべき自分の健康を自分で害した無責任な大人、ということ。
もっと言えば、罰を与えることで、自分に厳しくしたと満足しちゃってただけ なのかもしれません。
ただ、今一つだけ思うのは、「眠っちゃ駄目!」と冬山で遭難した人みたいな罰を自分に与える前に、もっと体のこと、健康のことを勉強していれば良かった!
ということです。
眠っている間、脳の中で何が起きているのか、当時の私はまったく知らず、
「眠っているのは死んでるのと同じ」と
すら思っていました。
睡眠の間、人間はただ休養しているわけではありませんよね。眠っている間、脳には覚醒時よりも活発に活動している部位だってあります。
睡眠時、脳は覚醒時には困難な特別な情報を処理しています。
その処理によって、覚醒時、私たちはスムーズにものを考えたり、何かを作ったりできるのですね。しっかり目を覚まして仕事をするために、定期的に眠ることも仕事の一つだとまったく知らなかったんですよね…
あなたの脳には未処理の仕事がたくさん残っている。だから、無理に起きていても目の前にある仕事が頭の中に入って来ない。
まずは頭の中に残ってる未処理の仕事を終えてしまわなくては。
そのためには仕事だと思って眠るべき。
きちんとそう説明して、眠ることに納得してもらいます。
可哀想、自分に厳しいのね、もっと自分を癒してあげなきゃ、という優しい言葉だけでは、無知から健康を害そうとしている人を助けることは出来ないです。
その一瞬、疲れている人を慰められるだろうけど、その人の状況はあまり変わらないからです。
無知が健康を害することもあれば、正確な知識が状況を打開することもある。私の場合は「眠ってはいけない」でしたが、「ダメな自分」に罰を与えている方はけっこうおられます。
「食べちゃいけない」
「遊んじゃいけない」
「楽しんではいけない」
「いつも笑っていなきゃいけない。怒ってはいけない」
「幸せになってはいけない」
などなど…